どうも、ラノベ作家の片沼ほとりです。
いきなりですがご報告です。
作家デビュー3年目、アマチュアから数えれば6年目。
片沼ほとり、ついにWeb小説を始めました!
『寝ている間に無自覚無双 ~怠惰に生きたい転生貴族、楽するために開発したオートスキルで知らないうちに国を救っていたようです~』
カクヨムとハーメルンの2サイトに掲載しているので、よかったら覗いてみてください。

主人公は怠惰を極めた人間で、「寝ている間に宿題とか雑務とか、面倒ごとを全部片付けてくれるスキルを開発したらめっちゃ良くない?」と考えて、実際に開発してしまいます。
そして眠るわけですが、その記憶のない間に、本人の知らないところで大活躍してしまいます。
主人公も周囲も勘違いがどんどん加速していく勘違いコメディです。
まだ第1話しか公開していませんが、だいぶ先まで書き溜めてあるので、どんどん公開していきます。
面白いのでぜひチェックを!
とはいえまだ1話しかないので、作品そのものについては語りません。
(それはいずれまた!)
今日の話題は、新人賞受賞作家のWeb投稿について。
これまで僕は新人賞を経由して、受賞作を3冊本にしてきました。
その一方で、Web小説投稿サイトには一文字も投稿したことがありませんでした。
いわゆる「なろう系」が嫌いだったわけではありません。
単に新人賞の受賞を狙うには向かないので書いてこなかっただけです。
元々僕はいろんなジャンルを書いてみたい性分で、実際受賞作3つもジャンルが違います。
「ザ・なろう系」の作品、さらに言えば「勘違いもの」はずっと書いてみたかったので、それが本作を書いた一番の理由です。
とはいえ……。
新人賞でデビューしているのだから、わざわざWebに投稿しなくてもいいのではないか。
そう思われる方もいるはずです。
ただ、そうも言っていられない事情もあったりして、こうしてWeb投稿を始めました。そんな裏話を書いていきます。
この記事の内容はPodcastでも話しています。
音声で聞きたい方はこちらをどうぞ。

24.Web小説、始めました ~新人賞受賞作家のWeb投稿について~ - ラノベ作家はいいぞ
ラノベ作家・片沼ほとり、ついにWeb小説を始めました!というわけで、外からはなかなか見えない「新人賞受賞作家のWeb投稿観」を語りました。 ▼投稿を始めた新作『寝ている間に無自覚無双』はこちらカクヨム: http…
新人賞は「作家」を選び、Web投稿は「作品」を選ぶ
まずは大前提の話からいきます。
ライトノベル作家としてデビューするルートは、大きく2つあります。
出版社が募集している新人賞を受賞するか、Web投稿サイトに投稿して編集者に拾い上げてもらうかです。
このあたりの基本は別の記事に詳しくまとめてあるので、気になる方はこちらをどうぞ。
ここでは、業界の内側から見たときの違いを一つだけ押さえておきます。
新人賞は「作家」を受賞させ、Web投稿サイトは「作品」を拾い上げます。
新人賞の場合、受賞作の刊行が終わった後は「企画立ち上げ」に進みます。
担当編集者と2人で「次はこういう作品を書きましょう」と相談して、編集会議を通して出版する形ですね。
つまり、次の作品を一緒に作っていく関係が続くわけです。
一方のWeb投稿サイトは、作品単位の付き合いになりがちです。
「この作品の刊行が終わりました」となった後に来るのは、次を一緒に作りましょうという話ではなく、「また新しい作品を書いて、Webで人気を取ってきてください。そうしたら本にします」という話であることが多いのです。
こうして並べると、新人賞受賞作家には企画立ち上げという道がある以上、そっちがメインじゃないの、という感じがします。
実際、そういう時代もありました。
……ところが最近、新人賞でデビューした作家がWeb小説をやっているケースが、明らかに増えています。
僕もその一人になったわけですが、読者の方でも肌で感じている人は多いのではないでしょうか。
新人賞作家がWebに投稿する、3つの理由
書き下ろしで出せばいいのに、なぜわざわざWebに投稿するのか。
ここには、企画立ち上げにはない利点があります。
大きく3つです。
1. たくさんの編集者の目に触れる
まず、これがとにかく大きい利点です。
受賞してレーベルに所属すると、基本的にはひとりの編集者が担当についてくれます。
言い換えると、担当はひとりしかいません。
「こんな面白い企画を考えたんですよ、本にしませんか」と持っていって、その担当編集者に「これはダメだよ」と言われたら、そこで終わりです。
仮に担当が「いいですね」と言ってくれたとしても、その先には編集会議があります。
レーベルとしてこれを出すかどうかを判断する場で、最終的に編集長がOKを出さなければ本にはなりません。
どこかで一度NOが出れば、企画は通らないわけです。
ですがWebに投稿すれば、話は変わります。
カクヨム、小説家になろう、ハーメルン。
こうしたサイトを見ているのは読者だけではありません。
いろいろなレーベルの編集者が、「いい作品はないかな」「伸びている作品はないかな」と探しながら日々巡回しています。
そういう場所に作品を置いておけば、何十人といる編集者の誰かが「これ面白いな」と声をかけてくれるかもしれません。
ひとつの出版社に可能性を狭めず、間口を広げておくこと。
これがWeb投稿をする理由のひとつです。
もう少し具体的な話をすると、「小説としては難しいけれど、これは漫画映えするよね」という作品に、漫画の編集者からコミカライズだけの打診が来ることもあります。
小説編集部からの企画立ち上げではありえない、Webならではの形ですね。
実際、「新人賞を受賞して、担当編集者に企画を持ち込んだらダメだと言われた。もったいないのでWebに投稿した」というケースはちょくちょくあります。
そこから他社の編集者に声をかけられた、というのも実によくある話です。
2. ファンを獲得できる
これも書き下ろしにはなかなかできない話です。
Web投稿サイトには、フォローやブックマークという機能があります。
読者が「この人の作品、面白いな」と思ったら、作家をフォローしてくれる。作品単位でフォローすることもできます。
そうすると、その作品の新しい話を投稿したときに、フォローしている人へ通知が飛びます。
まったく新しい作品を投稿したときも、作家をフォローしている人に通知が飛びます。
ひとつの作品を連載しながら別の作品を始めたなら、前の作品の最終話に「新作を始めました、読んでください」と書いて誘導することもできます。
Webでは、読者に対してこちらから最新話・最新作を届けられます。
これが書き下ろしではなかなかできません。
もちろん、本屋に並ぶとか、Xで「本が出ました」と宣伝するくらいのことはできます。
ですがそれが、その作品を読んでくれた人に必ず届くとは限りません。
「1巻を買ったけど、2巻が出ていることに気づいていませんでした」
こういう読者さんのポストもXでよく見かけます。
作家としては、なかなか切ないものがあります。
このpush型の通知というのは、デジタルを活かした、新しい媒体だからこその強みですね。
3. 人気が出れば、立場が強くなる
3つ目は、人気が出ればという条件付きの話です。
膨大な数の作品の中で勝ち残り、人気が出て、ランキング上位に乗るような状態になると、いろいろなレーベルから打診が来ます。
「この作品、すごくいいですね。読者もついていますし、うちで出させてもらえませんか」と。
本当にいい作品だと、2社3社、多いときには10社以上から声がかかることもあります。
そうなると何が起きるかというと、作家側がレーベルを選べます。
条件のいいところを選べるので、印税率であったり、コミカライズをするかどうかであったり、自然と条件が良くなりやすいのです。
印税率が新人賞の受賞作や書き下ろしより高い、ということも余裕であり得ます。
新人賞と比べてみると分かりやすいと思います。
新人賞は、そのレーベルにしか作品を送っていません。
「受賞させてあげます。ただし条件はこれです」と言われたら、基本的には従うことになります。
もちろん、あまりに低い条件を出せば噂も立ちますから、出版社もそのあたりは考えてくれています。
それでも、数字として人気が明らかな作品と、これからどうなるか分からない新人賞の作品とでは、立場が違うのは確かです。
発売が決まっている作品も、発売前にWebに載せる
ここまでの流れを踏まえると、こういうことも起きます。
すでに発売が決まっている書き下ろし作品を、あえて発売前にWebへ掲載するのです。
これは作家が勝手にやることではなく、編集者と相談して「発売前にWebに載せておきましょう」という形で決まります。
Web小説の投稿サイトには、出版社が運営しているものがあります。
例えばカクヨムはKADOKAWAの運営です。
なので、同じKADOKAWAの電撃文庫やファンタジア文庫、スニーカー文庫、MF文庫から発売が決まっている作品を、事前にカクヨムへ投稿しておくこと。
あるいはカクヨムネクストに載せておくこと。
これは結構よく見る光景です。
では、すでに発売が決まっている作品を、なぜわざわざ無料で読める場所に載せるのか。
答えはシンプルで、そのほうが売れるからです。
僕たち作家側からはデータが見えませんが、出版社側の数字としてそう出ているのだと思います。
なぜそうなるのかは、漫画で考えてみると分かりやすいです。
今の日本で、漫画は1話2話が無料で読めるのが当たり前になっています。
それがスタンダードなので、1話も無料で読めない書き下ろしの漫画なんて、まずありません。
試し読みがないと、読者は価値を判断できないからです。
いえ、判断できないというより、無料で試せる作品が隣に並んでいる中で、どんな作品か分からないものを買う理由がない、という話ですね。
この無料戦略には良し悪しがあります。
漫画は無料で読むものだ、という感覚が広まりすぎて、お金を払ってくれる人が減るという問題も起きています。
それでも漫画は読者の母数が桁違いに大きいので、成り立っているところがあります。
そしてラノベも、同じ流れの中に来ているのが現実だと思います。
大昔は本しかありませんでした。
そこからWeb小説投稿サイトという文化ができて、最初のうちは全体のレベルもそれほどではなかったはずです。
ですが今は違います。
ご存じの通り、Webに載って無料で読めて、そこから本になって爆発的に広がった作品がいくつも生まれました。
玉石混交とはいえ、ランキング上位を見れば商業レベルの作品がいくらでもあります。
小説はWebで無料で読めるもの、という感覚が当たり前になってきています。
しかも漫画と違って、Web小説は全部無料です。
出版戦略も、時代に合わせて変えていかないといけないわけです。
発売前にWebに載せる理由は、ほかにもあります。
小説の出版は決まっているけれど、コミカライズはまだ決まっていない。
そういう状態でWebに載せておいて、漫画の編集部から声がかかる、というパターンです。
契約まわりは少しややこしくて、小説の出版がもともと決まっている以上、コミカライズ側は小説の出版社にお金を払う形になったりします。
そのあたりの事情はありつつも、載せておくと可能性が広がるのは確かです。
他にも、Webで人気が出れば、もともと出版が決まっていた作品でも部数を増やしてもらえることがあります。
載せるだけ得だよね、という判断になるわけですね。
ちなみに、「Webに載せたら全部無料で読めるのだから、買う人がいなくなるのでは」という心配もあると思います。
これが不思議と、そうならないようです。
紙の本で読みたいという人がいます。イラストや加筆がつくから買うという人もいます。
無料で読める作品を、応援の気持ちで買ってくれる人もいます。
そもそもWeb小説を読む層と、紙や電子で本を買う層は分かれている、という話もあります。
この先どうなっていくかは分かりませんが、今のところはこういう戦略が業界に浸透している、という話でした。
それでも「Webが上位互換」ではありません
ここまで読むと、じゃあもう時代はWebなんだな、と感じた方もいるかもしれません。
ですが、そういう話ではありません。
まず、Webは発見してもらうことがとにかく難しいです。
投稿サイトが始まった頃は、書けば読まれる環境だったのかもしれません。
ですが今は、毎日とんでもない数の新作が増えています。
投稿しても、一人にも読まれません。
これが普通にあります。
100PVいけば上位半分に入る、といったデータを見た記憶があります。正確な数字は忘れてしまいましたが、あれだけの数があるならそりゃそうか、と妙に納得しました。
「今の環境で0から成功するのは昔より厳しい」と、Webですでに地位を確立してプロになった作家は口を揃えて言うでしょう。
僕の場合は、今回あげた作品も、0PVのままということはありませんでした。
昨日Xで告知をし、最初から読んでくれる方がいて、感想や評価もいただけています。
ここはやはり、プロとしての実績がものをいった所です。
そして先ほど触れたとおり、Webの人気は基本的に作品単位で終わります。
一度本になっても、「では次も人気を取ってきてくださいね」と言われます。
Webは流行の移り変わりがとても速いので、その流行に乗り続けること、投稿ペースを維持し続けることが大変です。
だからこそ逆に、Webで書籍化してプロになった人が、「新人賞を獲りたい」と言って新人賞に挑戦するケースもあります。
どちらから見ても、隣の芝生は青いということですね。
これからプロを目指すなら、どちらを選ぶべきか
では、今プロを目指すアマチュア作家にとってはどちらがいいのか。
見てきたとおり、どちらにも良し悪しがあります。
その上で僕がいつも言っているのは、自分が好きな方を書きましょう、です。
Webで評価される作品と、新人賞で評価される作品は、まったく違います。
Webは流行の力が強い世界です。
カクヨムの週間ランキングを覗けば、「今はこういうものが流行っているのか」がすぐに分かります。
それを見て「じゃあこれを書こう」とすぐ動ける人が伸びていきます。
逆に、Webでまったく流行っていないタイプの作品を書けば、0PVもあり得ます。
新人賞はそうではありません。
Webで取れるような作品をわざわざ選んでも仕方がないので、手堅い作品よりも、新しい作品や、大ヒットするかもしれない作品が選ばれる傾向にあります。
受賞作のラインナップがバラバラなのは、そのためですね。
なので、選び方はこうなります。
- Webの人気作を読む
- 新人賞の受賞作を読む
- 「自分もこういうものを書きたい」と思った方を選ぶ
流行っているWeb作品を読んで「これめちゃくちゃ面白い、自分もこういうのを書きたい」と思ったならWebがおすすめです。
受賞作を読んで「こっちを書きたい」と思ったなら新人賞へ。
どちらを選んだとしても、共通する部分は多いですし、書けば実力はついていきます。
そして実力さえあれば、後からジョブチェンジはできます。
新人賞を獲った人がWebで成果を出すことも、Webで成果を出した人が新人賞を獲ることも、素人がゼロからやるよりはずっと簡単です。
それぞれのコツは要りますが、越えられない壁ではありません。
まずは、モチベーションが上がる方から始めてみてください。
……というわけで、Web小説を始めた話でした。
そして最後にもう一度。
『寝ている間に無自覚無双』、めちゃくちゃ面白い作品に仕上がっています。
読んでね!





