どうも、ラノベ作家の片沼ほとりです。
いきなりですが宣伝です。
2026年7月8日、「俺は学園頭脳バトルの演出家!」のコミカライズ第1巻が発売されました!!

ゲームによる決闘で全てが決まる帝王学園。 自他共に認めるモブ高校生・田中叶太が目指すは、自らが成り上がることではない。 裏社会からやってきた最強の転校生・霧谷透を『最強の主人公』の高みへ至らせるべく、陰から『演出』することのみ――。 ……っ…
本当に素晴らしいものに仕上がっているので是非読んでください!
上のリンクから試し読みしていただくだけでも、その美しさがすぐにわかりますので!
……と、これ以上言葉を重ねても仕方ないので。
せっかくの機会ということで、この記事ではコミカライズの裏側についてお話しします。
コミカライズとは、小説を原作にして漫画を作ることです。
近年はラノベのメディアミックス、アニメ化やコミカライズやその他諸々が増えており、特にコミカライズはかなり身近なものになってきました。
一方で、その企画はどうやって決まるのか、原作者は何をするのか、収入はどうなっているのか。
このあたりの話は、読者さんからはもちろん、作家志望者の方からもなかなか見えません。
かく言う僕も、自分の作品のコミカライズが決まるまで、知らないことだらけでした。
僕は今回発売された「演出家」に加えて、「俺にだけ小悪魔な後輩は現実でも可愛いが、夢の中ではもっと可愛い」(通称:こあゆめ)という作品もコミカライズしていただいています。

マジメで堅物、ストレートな物言いで疎まれ気味な生徒会長・日下部慧吾。大人気俳優を両親に持ち、自身も美しい見た目とふるまいで人気の生徒会役員・花咲千春。 じつはお互い両想いでありながら、マジメで不器用な慧吾は千春を気遣って他人行儀に、恋愛下手…
2作品分の経験、他の作家さん・漫画家さん・編集者さんから聞いた話をもとに、「コミカライズってこういうものなのか」という実態を、ラノベ作家目線でお伝えします。
作家志望者の方には夢のある話として、読者の方には制作の舞台裏として、楽しんでもらえたら嬉しいです。
この記事の内容はPodcastでも話しています。
音声で聞きたい方はこちらをどうぞ。
https://listen.style/p/lightnovel/pbnso9xw
コミカライズ企画が決まるまで
決めるのは「漫画側」の編集部
そもそも、コミカライズの企画はどうやって生まれるのでしょうか。
まず大前提として、コミカライズをするかどうかを決めるのは、小説側ではなく「漫画側」の編集部です。
小説の企画は編集部の企画会議で決まるように、漫画の企画は漫画編集部の企画会議で決まるわけですね。
小説家や編集者が「コミカライズしたい」と言っただけではコミカライズは始まりません。
小説家、小説編集者、漫画家、漫画編集者、漫画編集部。
すべての合意が取れて、初めて企画が始まります。
企画が生まれる2つのルート——漫画側からの打診と小説側からの営業
きっかけは大きく2つあります。
ひとつは、漫画側からの打診です。
漫画の編集者がライトノベル作品に目をつけて、発売前や発売後に「この作品、コミカライズさせてもらえませんか」と声をかけるパターンですね。
もうひとつは、小説側からの営業です。
小説の編集者が、いろいろな漫画編集部に「この作品をコミカライズしませんか」と売り込むパターンです。
だいたいはこの2つのどちらかで企画が生まれます。
多くの出版社には、同じ会社の中にライトノベルを扱う部署と、漫画を扱う部署があります。
例えば僕の「演出家」なら、小説はオーバーラップ文庫という小説レーベルから、コミカライズは同じオーバーラップ社のコミックガルドという漫画レーベルから出ています。
「こあゆめ」も、電撃文庫と電撃だいおうじは同じKADOKAWAです。
こういう場合、特に小説発売前の連携が取りやすくなっています。
一方で、会社をまたぐ企画も普通にあります。
発売前の小説を持って編集者が他社の漫画編集部に打診することもあれば、発売後に「この小説、漫画にしたら面白そうだ」と他社から声がかかることもあります。
あるいはシンプルに、売れた作品に声がかかるケースもありますね。
漫画家さんはどう決まる?——候補提示とコンペ
では、「誰が漫画を描くか」はどう決まるのでしょうか。
これもいろいろあるようなのですが、よくあるのは担当編集者さんがコミカライズ作品の候補を漫画家さんに持っていく形です。
漫画の編集者と漫画家は「担当」の関係なので、編集者が「コミカライズをやりましょう」となったとき、その漫画家さんに合いそうな原作の候補をいくつか持っていって、読んでもらいます。
その中から漫画家さんが「これをやりたいです」と選んだら、話が進んでいくわけです。
もうひとつがコンペ形式です。
「この小説をうちの編集部でコミカライズする」というのが先に決まっていて、どの漫画家さんに任せるかを選ぶために、複数の漫画家さんにネーム(コマ割りやセリフを配置した、漫画の下書き)やキャラクターデザインを出してもらいます。
その良し悪しを編集部で判断したり、原作側で判断したりする形ですね。
漫画家不足? 原作不足?
ちなみに業界では、「漫画家が足りていない」とも「原作が足りていない」とも言われていて、立場によって意見が分かれます。
ぶっちゃけこれについては「良質な漫画家・原作が足りない」というだけの話だと感じています。
原作サイドから見れば一定以上のクオリティで描ける漫画家が足りておらず、漫画サイドから見れば一定以上のクオリティでヒットを狙えそうな原作が足りていないわけです。
とはいえ、僕の体感では、今のところは漫画家さんの方が足りていません。
「コミカライズは決定しているのに、描いてくれる漫画家さんが見つからない」という作品の方が多い印象です。
だからこそ基本的には漫画家さんが「どの原作をやりたいか」を選べる立場で、人気の原作は取り合いやコンペになる、という構図なのだと思います。
こう見るとラノベ作家にとっては厳しい環境に見えますが、そうとも言い切れません。
というのを、僕の実例でお話ししましょう。
実例:僕の2作品のコミカライズはこう決まった
企画が決まるまでの話をしてきましたが、片沼作品の場合はどうだったのか、をお話ししましょう。
「演出家」の場合——発売前に決まった王道ルート
「演出家」は、まさに王道の企画決定ルートを通った作品でした。
この作品は新人賞受賞作ですが、なんと小説の発売前にコミカライズが決まっています。
小説第1巻の帯(表紙に巻かれている宣伝の紙)に「コミカライズ企画進行中」と書いてあったのですが、その裏側で起きていたのは、こんな流れです。
コミックガルドの編集者さんが、漫画家のはっとりまさきさんと「何かコミカライズをやりましょう」という縁を持つ
はっとりさんの描きたい作風を聞きながら、小説側の編集部に「こういう作品はありませんか」と相談する
挙がってきた候補作をいくつかはっとりさんに読んでもらったところ、「この『演出家』という作品、面白いです。やってみたいです」と選んでもらえた
……という経緯だったそうです。
僕はその場にいたわけではなく、後から編集者さんに聞いた話なので、どこまで正確かは分かりません。
それでも、数ある候補の中から選んでもらえたと聞いたときは、とても嬉しかったです。
発売前の新人賞受賞作が候補に挙がるというのは、まさに同じレーベルだからできること。
そして、ちょうどそのタイミングではっとりまさきさんがコミカライズできる作品を探していたことも含めて、ご縁としか言い様がありません。
実際、はっとりさんはすごく力を入れて、楽しく描いてくださっていると聞いています。
それはもう、漫画を読んでいただければ伝わるはずです。読んでね!(念押し)

ゲームによる決闘で全てが決まる帝王学園。 自他共に認めるモブ高校生・田中叶太が目指すは、自らが成り上がることではない。 裏社会からやってきた最強の転校生・霧谷透を『最強の主人公』の高みへ至らせるべく、陰から『演出』することのみ――。 ……っ…
「こあゆめ」の場合——漫画家さんが自分から手を挙げた珍しいルート
一方の「こあゆめ」は、かなり珍しいルートを通りました。
先ほど僕は「ルートは2つあります」などとほざきましたが、そのどちらもありません。
結論から言うと、漫画家さんの側から編集者に掛け合ってくれたパターンです。
普通は、先ほど書いたとおり編集者が漫画家に打診します。
原作から営業をかけた場合でも、編集者がまず判断して、自分の担当する漫画家に声をかけるわけです。
ですがこの作品については、漫画家のときゎさんが編集者とは関係のないところで僕の小説を読んで、「この設定がすごくいい。ぜひやらせてほしい」と担当編集者さんに掛け合ってくださったのです。
これは本当に珍しいらしく、業界歴の長い僕の担当編集者さんも「このパターンは初めて聞きました」と言っていました。
実際僕も後からときゎさんの過去作を読んだのですが、「そりゃあこれを描く人はこあゆめの設定好きだよね」と納得しました。
そしてときゎさんも、とても楽しく描いてくださっていると聞いています。
漫画を読んでいただければ分かるとおり、ヒロインが実に生き生きと描かれています。読んでね!

マジメで堅物、ストレートな物言いで疎まれ気味な生徒会長・日下部慧吾。大人気俳優を両親に持ち、自身も美しい見た目とふるまいで人気の生徒会役員・花咲千春。 じつはお互い両想いでありながら、マジメで不器用な慧吾は千春を気遣って他人行儀に、恋愛下手…
コミカライズ実現のために、原作者にできることはある?
以上、企画が決まるまでのお話でした。
僕の2作の実例は、本当に恵まれている例だと思います。
新人賞受賞作3つのうち2つがコミカライズしているだけでもかなり高い確率な上、その両方で、漫画家さんが作品を気に入って楽しく描いてくださっています。
……ラノベ作家目線で語ると言っておきながら、企画成立までの話に、原作者がまったく登場していないことにお気づきでしょうか。
そうなのです。
企画が決まるまで、原作者には連絡すら来ません。
打診も営業も選定も、すべては編集者さんと漫画家さんの間で進んでいきます。
つまり、コミカライズの実現のために原作者にできることは、ほぼありません。
自分の書いた作品が、どこかで編集者さんや漫画家さんの目に留まり、「いいな」と思ってもらえることを祈るのみです。
構図としては、ラノベの新人賞やweb投稿サイトと同じですね。
とにかく作品にすべてを込めて、あとはすべてを祈るわけです。
こういう経験をするたびに、「選ばれる」のは大変なことだと実感します。
新人賞なら倍率は100倍を超えますし、コミカライズされるラノベはかなり増えたとはいえ、やはりハードルは高いままです。
ですが、この形には良い面もあります。
想像してみてほしいのですが、もし漫画家さんが余っていて、「やりたくない作品でも義務として描かなければいけない」という状況だったら嫌ですよね。
今はその逆です。
選ばれるのは大変ですが、選んでくれたということは、漫画家さんがその作品を描きたいと思ってくれたということです。
だからこそ、モチベーション高く一緒にやっていけるわけです。
コミカライズ決定から連載開始まで
ここからは、企画が決まった後の話です。
原作者の側から、コミカライズはどう見えるのか。時系列でお伝えします。
ある日突然、メールで連絡が来る
漫画家さんと編集者さんの間で「これをやろう」と固まると、漫画編集部の企画会議を通して、ついに原作者に連絡が来ます。
これが本当に、いきなり来ます。
ある日メールで、「コミカライズ企画が進んでいます」と。
最初に来た時は「え、マジですか?」みたいな気持ちになります。
このタイミングで来るのは、企画が進んでいるという報告と、「コミカライズを進めてもいいですか」という確認です。
原作者には、コミカライズ自体をお断りする権利もあるので、その意思確認ですね。
編集者さんは念を入れて「まだ確定ではないのですが」と前置きしてきます。
とはいえ、原作者に連絡が来る段階では、ある程度企画は通っているのではないかと思っています。勝手な推測ですが。
ちなみに僕の場合、2作品ともこの最初の連絡では、漫画家さんが誰かはまだ書かれていませんでした。
「ぜひ進めてください」と返してしばらくすると、「漫画家さんはこの方です」という連絡とともに、キャラクターデザインのラフなどが送られてきます。
そこで「この方にお任せしていいですか」という判断が入るわけです。
ここで「この人には任せたくないです」とお断りする場合もあります。ここは原作者の権利です。
ですが、僕は迷わず二つ返事でした。
「こんなに上手い方に描いてもらっていいんですか??」と。びっくりしました。
キャラデザ→プロット→ネーム→原稿の順で進む
漫画家さんが決まると、いよいよ制作が始まります。
これは普通の漫画も同じですが、連載が始まるまでに、だいたい3話分の原稿を用意しておくのが標準的なようです。
第1話から第3話まできれいに完成した状態で、webや雑誌での連載がスタートするわけですね。
その過程で、原作者のもとにはいろいろなものが順番に届きます。
最初に届くのは、キャラクターデザイン(のラフ)です。
これがもう、感動します。
もちろん0→1の小説の時ほどの衝撃はないとも言えますが、やはり絵柄が異なるとまた違った感動があります。
原作小説の1巻時点ではイラストがなかったキャラクターにデザインがつくこともよくあります。
「このキャラはこういう姿だったのか……」と、原作のときと同じ種類の感動を、もう一度味わえたりもしました。
キャラデザと同時並行で、プロットも届きます。
「1話でここまで、2話でここまで、3話でここまで進めます」という設計図ですね。
基本的には原作準拠で進めるので、省略されることもあります。
そこからネームが届いて、コメントを返して、原稿へと進んでいきます。
こうして3話分の原稿が固まるまで、少しずつ形になっていくわけです。
打ち合わせは誰とする? 漫画家さんとは会いません
この期間は、キャラデザが届きました、ネームが届きました、という連絡が不定期にどんどん来て、こちらもじっくり見てコメントを返す、の繰り返しになります。
ここで裏話。コミカライズというと、よく「漫画家さんとはどのタイミングで会うんですか?」といった質問をされます。
答えを言うと、原作者が直接やり取りするのは、基本的に小説側の担当編集者さんだけです。
漫画家さんと直接話すことはありませんし、漫画側の編集者さんと話すこともほとんどありません。
すべてのやり取りが、小説の編集者さんを窓口にして進みます。
関係者を集めた顔合わせやキックオフミーティングみたいなものも、一切ありません。
普通の会社で新しいプロジェクトが始まるなら、まず関係者全員を集めて「キックオフやりましょう」となるでしょうが、このあたりは出版業界の特殊なところだと思います。
おそらくですが、クリエイター同士を直接会わせて、もし揉めてしまったらまずい、といった歴史的な配慮なのだと思います。
実際、「こあゆめ」では漫画側との打ち合わせの場は、今まで一度も設けられていません。
ただ、「演出家」では例外的に、漫画側の編集者さんとお話しする機会がありました。
オーバーラップは小説編集部と漫画編集部の距離がとても近く、両者が協力しあって作品を盛り上げていく社風の会社です。小説と漫画の編集部が同じフロアにあるとか。
それもあってか、「せっかくなので」と、僕と小説の編集者さんと漫画の編集者さんの3人で、ご飯をご馳走になりながらお話しする機会がありました。
それでも、漫画家さんとお会いしたことは今のところありません。
もしお会いできるとしたら、打ち合わせではなく、祝賀会や交流会のような場になるのかなと思います。
いつか、はっとりさんやときゎさんとお会いできたら嬉しいですね。
連載開始までは半年〜1年
こうした準備を経て、ついに連載が始まります。
最初の「企画が進んでいます」の連絡から連載開始までは、早くて半年、だいたい1年ほどかかります。
読者さんから見れば「コミカライズ決定!」の告知から第1話まで随分と長く感じると思いますが、水面下にはこれだけの準備期間があるわけです。
原作者としては、届くものすべてが楽しみな、幸せなすり合わせの時間です。
原作者はどこまで口を出す?——監修のリアル
制作の流れをお話ししたところで、気になるのは「原作者はどこまで口を出すのか」ではないでしょうか。
いわゆる監修(原作者としてのチェック)のスタンスです。
ここは作家によっても違うところですし、揉めたり揉めなかったりときな臭い部分ですが、僕の方針としてお話しします。
基本方針は「任せる」
僕の基本方針は、「任せる」です。
もちろん、明らかにキャラクターがブレている、話の筋が通っていない、という箇所については、「こうすると良くなりそうです」という提案をがっつりします。
ですがそれらの提案も、最終的にどうするかを決めるのは漫画側だと思っています。
コミカライズは、漫画家さんの作品です。最終決定権は向こうにあります。
その前提を注意深く共有した上で、良くなりそうなことを提案する、というバランスで関わっています。
同じ原作者でも、作品ごとにここまで違う
実際、同じ僕の作品でも、「こあゆめ」と「演出家」ではコミカライズの方針がかなり違います。
「こあゆめ」は、原作からけっこう変えている部分があります。
大筋を変えているわけではないのですが、エピソードを1話にまとめるためにバッサリ切ったり、続きが気になる引きを作るために展開を調整したり、新しい漫画ならではの演出を加えたり。
ときゎさんがかなり工夫してくださっていて、原作者の僕が「なるほど、そう来たか」と楽しませてもらっています。
表現の面でも、ヒロインの千春を表情豊かにデフォルメして、コミカルに可愛く描いてくれているのは、ときゎさんの持ち味です。
一方の「演出家」は、原作にかなり忠実に、丁寧に作られています。
そのぶん表現面では、率直に言うと、原作よりだいぶエッチな描き方になっています(笑)。
不思議ですね。
これらは原作側で指定したものではありません。
漫画側の「こういう作品として売り出したい」という戦略や、漫画家さんの「こういう絵を楽しく描ける」という持ち味など、いろいろな事情が乗る部分です。
原作者としては、そうした漫画側の意図を見ながら、相談しながら進めていく形になります。
勝負は最初の3話
そんな「任せる」方針の僕でも、提案を一番たくさんするのが、連載開始前の第1〜3話です。
ネームの段階で、このセリフの方向性はこうがいいのでは、この場面の表情はこうでは、と結構言います。
この時期はまだ準備期間なので、修正がききます。
そして何より、第1話から第3話は作品の方向性を決める、一番大事なところです。
「この作品はどういうものなのか」という意思疎通を、お互いにここでやりきるわけです。
それができていれば、連載が始まった後の提案は、どんどん減っていきます。
連載が始まってから
では、連載が始まった後、原作者は何をしているのでしょうか。
これは分かりやすくて、基本的には月に2回、同じことをやります。
連載開始後の原作者の仕事は、月1回ずつのネームチェックと原稿チェックです。
web連載のコミカライズは月1回更新が多く、毎月ネームが届いて「確認お願いします」と依頼が来るので、コメントを返します。
先ほど書いたとおり、連載が進むにつれて提案は減っていきます。
それでも、「このセリフはこちらの方が良くないですか」とか、「この小さいコマ、こっちにあった方が良くないですか」とか、思いついたら言うだけ言ってみます。
良くなりそうなことは提案する、最終決定は向こう、の原則はここでも同じです。
原稿チェックの方は、皆さんが読むのと同じ完成原稿の確認です。
ネームとは時間差があって、8話のネームを見ているタイミングで6話の完成原稿が届く、というようなイメージですね。
完成した原稿に大きな直しは入れられないので、どうしても気になるセリフを相談するくらいで、基本的には「OKです」とお返しします。
こうしてみると、連載が始まった後の原作者の負担は、かなり少ないです。
サッと確認して返すだけなら、すぐに終わります。
僕はネームはわりとじっくり読んで考えるタイプですが、それでも月に2時間ほどでしょうか。
あとは、コミックスの発売のようなタイミングには、追加のお仕事が入ることもあります。
例えば今回発売された「演出家」のコミックス第1巻には、巻末に僕が書き下ろした数ページの短編小説が収録されています。
こういう寄稿の依頼が来ることもあるわけです。
とはいえ、基本は毎月ネームと原稿が届いて、幸せな気分になって、「ありがとうございます」とお返しする日々です。
こうして振り返ると、コミカライズは本当に「漫画家さんの作品」だなと思います。
もちろん、元になる小説を何百時間もかけて書いたからこそ、あとで楽をさせてもらえているわけですね。
コミカライズの収入はどれくらい?
最後に、気になるお金の話です。
先にお断りしておくと、このあたりは契約や場合によって、本当にいろいろです。
具体的な自分の契約の話はできないので、僕が当事者として見聞きしている相場感を、ぼかしながらお伝えします。
コミカライズの原作者の収入は、大きく2種類あります。
コミックスが出たときの印税と、毎回の連載に対する原稿料です。
印税の相場——原作者は2%前後
作家の印税収入は、「本の値段 × 発行部数 × 印税率」で決まります。これは小説の場合と同じです。
そして、コミカライズの原作者の印税率は、2%前後が相場です。
僕が聞く範囲では、低くて1%、多くても4%ほどかなと思います。
漫画を1人で描いた場合の印税率は、これも小説と同じですが、10%が基準です。
コミカライズの場合は、その印税を原作者と漫画家さんで分け合う形になります。
比率はおおよそ、原作者1:漫画家4です。
つまり「原作者2%・漫画家8%」くらいが相場感、というわけですね。
もちろん、交渉や関係性、原作の知名度など、いろいろな要素で変わる部分ではあります。
原稿料(監修費)は「ない」ことも多い
もうひとつが原稿料——毎回の連載に対して支払われるお金です。
これは漫画家に対する呼び方で、コミカライズなら原作者目線で監修費と呼ばれたりもします。
小説原作のコミカライズでは、原作者への原稿料はないこともあります。
ある場合は、1話あたり数千円〜数万円、あるいは1ページあたり数百円〜数千円、といった形が多いようです。
小説原作の場合は「小説の印税をちゃんともらっているでしょう」ということで、薄くなりがちなのだと思います。
これが漫画原作の場合——つまり、最初から漫画にすることを前提に原作ストーリーを書く仕事になると、原稿料はもっとしっかりつきます。
もちろん、文字ネームや脚本形式など、より漫画家さんがやりやすい形で提出するわけです。
ただ、漫画原作でも単価は場合によって全然違うそうなので、このあたりは交渉力や媒体の力次第なのでしょうね。
そのほか、先ほど触れた巻末の書き下ろし短編のような寄稿に、原稿料がつく場合もあります。
これも場合によりけりです。
まとめ:絵が描けなくても、あなたの小説は漫画になる
というわけで、コミカライズの裏側をたっぷり語ってきました。
僕はコミカライズを2作品もしていただいて、毎月素晴らしい漫画が届くだけでも幸せなのに、お金までいただいてしまっていいんですか? という気分で過ごしています。
作家志望者の方には、ぜひ知っておいてほしい話でした。
新人賞を受賞したり、web小説の人気から書籍化されたりした先には、こういう未来が待っています。
絵がまったく描けなくても、小説さえ書ければ、自分の物語が漫画になるのです。
こんなに夢のある仕事はなかなかありません。
そんな未来も思い描きながら、ぜひ挑戦していってください。
それではまた。



