こんにちは、片沼ほとりです。

今日は嬉しいご報告です。

僕が主宰する創作コミュニティ「ライトノベル梁山泊」のメンバーである沖田ねてるさんが、第22回 講談社ラノベ文庫新人賞を受賞しました。

作家活動の傍ら、本気でプロを目指している方に向けた創作指導をしてきましたが、僕の教え子としては初のプロ作家になります。

ゲストプロフィール:沖田ねてる(おきた・ねてる)

項目内容
受賞第22回 講談社ラノベ文庫新人賞 佳作
受賞作『娘が自主休学したので童顔の母親が代わりに登校していたことを、俺は知ってしまった』
執筆歴6年・受賞作は27作目
所属ライトノベル梁山泊(立ち上げメンバー)

「お祝いを兼ねつつ、沖田さんがどうやってここまで来たのかを聞かせてください」とお願いしたところ、ご快諾いただき、先日Xでスペース(生放送)を行いました。1時間48分におよぶ濃い内容になり、

  • 4年間、20作以上書いても二次選考を突破できなかった停滞期
  • そこから受賞するまでに経験した3つの転換点
  • ライトノベルの方程式を学び、すぐに結果が出た話

などをじっくり語っていただきました。

これからプロを目指していく方、特に**「努力しているけれど結果が出ない」**と悩んでいる方には、ど真ん中に刺さる内容になっていると思います。

受賞作はどんな作品?

沖田:沖田ねてると申します。物書きを始めて6年目で、この前、第22回の講談社ラノベ文庫新人賞で佳作をいただきました。

6年かけて結構書いてきて、ようやく、という感じなので、本当にいろいろ大変でした。

片沼:苦労されている分だけ、聞いている方にも役立つ話がたくさん引き出せそうですね。

僕の方は、片沼ほとりと申しまして、ライトノベル作家をやっています。その傍ら、創作を教える仕事もしていて、プロを目指すアマチュアの方向けの講座やコミュニティを運営しているんですけど——実は、沖田さんはそのコミュニティ「ライトノベル梁山泊」のメンバーです。

僕にとっては、教え子の中ではプロ第一号。これはお祭りじゃ、ということで今日はスペースに来ていただきました。

タイトルがほぼログラインの「秘密の共有ラブコメ」

片沼:では、まず受賞作の紹介を。

沖田:今回の受賞作はタイトルがちょっと長いんですが、

『娘が自主休学したので童顔の母親が代わりに登校していたことを、俺は知ってしまった』

(講談社ラノベ文庫新人賞 公式ページ)

という作品です。タイトルがほぼログラインみたいな感じなので、なんとなく内容のイメージはつくと思うんですけど。

主人公が通っている高校のクラスメイトに仲のいい女の子がいるんですが、その子が二学期から学校に来なくなって、代わりにお母さんが来ている。周囲も「あれ? なんか顔が似てるけど、なんか違くね? いや、でも触っていいのかこれ?」みたいな感じになって飲み込まざるを得ない状況なんですけど、主人公だけがそれに気づいてしまって、バレないように隠していく——という**「秘密の共有ラブコメ」**です。

片沼:いやあ、すごいタイトルですね(笑)。実際、Xでも「この作品のタイトルめっちゃ面白そうじゃん」って反応がありましたし。

沖田:タイトルがいいって言ってもらえるのは嬉しいです。ちなみに主人公はだいぶ変なやつです。

片沼:このたてつけで変人主人公! すげえカオスコメディが見れそうですね。

27作目での受賞

片沼:これも先に言っておきたいんですが、沖田さん、めちゃくちゃ書くのが早いんですよ。執筆歴は6年ということですが、今回の受賞作が何作目でしたっけ?

沖田:27作目ですね。

片沼:これがめちゃくちゃ多いんです。

僕もいろんな作家志望者に会ってきましたけど、だいたい受賞される方って、5作とか多くて10数作くらいの方が多くて。それで6年とかそれ以上の方もいますし。27作書き続けたっていうのが、まずすごい

書くのが早いっていうのは、他の人にない武器だと思っているんですよ。しかも、後天的に身につけづらい。僕自身は結構筆が遅い方で、アマチュア時代よりはマシになりましたけど、沖田さんみたいな筆の速さには多分なれない。

沖田:でも私も別に最初から早かったわけじゃなくて、書き始めた1年目とか、1日3000字書いたらバタンキューみたいな感じだったので。筋トレでしたね、私のイメージは。

片沼:そして、どんな26作の末にこの受賞作にたどり着いたのか……その経緯を聞くのが楽しみです。


沖田さんの執筆歴

ここからは、沖田さんがプロになるまでの軌跡を、過去から順番に振り返っていきます。

きっかけはカクヨムコン

片沼:書き始めたきっかけはなんだったんですか?

沖田:本当の意味で書き始めたのは、実は高校生のときだったんですよね。

年齢がバレそうなんですが、ちょうど『恋空』とかの携帯小説が流行ってた時期で、友達に「ちょっと書いてみない?」って誘われて、当時の魔法のiらんどみたいな、SNSでゲームも日記も小説もできるサイトで書いたのが最初です。

ただ、高校生だったので即座に飽きて辞めてしまって、そこからしばらく何もしてなかったんですけど。

6年前に、ちょうど息子が生まれたときに再開したんですよね。暇が出来て。

片沼:へぇ、子育てって忙しくなりません?

沖田:めちゃくちゃ忙しいんですけど、寝かしつけたりするとちょっと時間に余裕ができるんですよ。休日とかも、微妙に時間が余る瞬間があって。

そんなときに、登録だけしてた「カクヨムコン」のメールが来たんです。大賞賞金が何百万とか書いてあって、私、当時ライトノベルもチョビチョビ読んでたので——

「ワンチャンいけるんじゃね?」

って思ったんですよ。

片沼:いいですね、その考え方。

沖田:ちょっと下心ですね。ワンチャンいけたら、息子に「お父さん本出してるよ」って自慢できるかなって。

そんな感じでカクヨムとなろうに登録して、ベーって書き始めたら——意外と書ける、って思ったんですよ。

1作目で80万字、テンプレ異世界もの

沖田:処女作はまだカクヨムにも残ってるんですけど、80万字くらい書きました。

片沼:ちょっと待って、80万字!?

沖田:80万字書きました。文庫8冊分くらいですね。

片沼:すごいですね、いきなり80万字。たまにいますけど、本当に最初の作品で何十万字って書くタイプの人だったんだ。

沖田:『誰かの都合』っていうタイトルで、本当にテンプレ異世界モノなんですよ。高校生が異世界に転移して、魔王の力を得てしまって、魔王として狙われて、ヒロインと一緒に逃げ出して、そこから学校に通って魔王との戦いに巻き込まれていく——本当にテンプレみたいなのを書いてたら、すごい楽しくなっちゃって、ダーって書きまくってたんですよね。

カクヨムコンは中間にも引っかからなかったんですけど。

書いてる途中で「ノー勉強じゃいかんな」って気づいて、独学でYouTubeとか創作本で勉強し始めて、三幕構成とかキャラクターの作り方を学びました。それで2作目(10万字程度の現代ファンタジー)を書いて、コンテストに出して、見事に一次もかすらず落ちて凹んで……。

片沼:それでも、辞めはしなかったんですね。


コメディという「武器」の発見

3作目の擬人化ステータスで初スパイク

沖田:3作目を書こうかなというときに、当時Twitterで知り合いがちょびちょびできてて、「こんな作品どうかな」みたいなネタを投げ合ってたんですね。

それまでは割と真面目寄りな作品を書いてたんですけど、ちょっとちょけてふざけてみるかと思って——

「異世界転移してステータスを開いたら、ステータスが擬人化してヒロインとして主人公のそばにいたら面白くない?」

ってネタを投げたら、「面白いんじゃない?」って割と言われて。「あ、そんなおもろいんだ」って思って、書いてみたんですよ。

タイトルは『異世界に転移してステータスを開いたら、キャー喋ったー! っていう実体化ステータスがどうのこうの……』みたいな、またアホみたいな長いタイトルで。

これを書いてweb小説として載せたら、私史上初めて大受けしたんです。スパイクというか。

片沼:今まで全然反応がなかったのに、ですね。

沖田:それまでは付き合いで読んでくれる人くらいだったのが、3作目のコメディで一気に上がって、「腹かいて笑った」みたいなレビューをもらって——

「あれ? こんなに受けた?」

ってビビって。これが最初の転換点でした。「私ってコメディが意外と向いてるんだ」ってなんとなく気づいたんですよね。

片沼:今回の受賞作もコメディですが、そこから繋がってるんですね。

5作目のラブコメで確信

沖田:その後、4作目で書きたかった真面目寄りファンタジーを挟んで、5作目でもう一度コメディ——今度は現代ラブコメを書いたんですよ。

『私と付き合うのはダメですけど、あなたに彼女ができるのはもっとダメです』っていう、ヒロインにキープされる主人公のラブコメで。

片沼:おお、それもタイトルだけで面白そう。

沖田:これもまたバーンと受けて。それまで1話更新してPV10あればいい方くらいだったのが、ラブコメを書いた瞬間に1話でPV50〜100まで上がって。私の中ではめちゃくちゃでかい数字だったんです。

「あ、いける。私コメディいけるんだ」

って確信を得て、そこから一般公募——GA文庫大賞や電撃大賞——に出し始めました。

ラブコメと擬人化ステータスは一次選考突破まで行って、「こっちならいけるかもしれない」って思ったんですけど……。

ここから4年間、まったく勝てなくなる時代が始まります。


4年間の停滞期

二次の壁が突破できない

沖田:そこからは、よくて一次突破二次落ちみたいな状態が続いて。二次を突破したことがない4年間。

コメディ以外でもスパイクが立たないかなと思って、ホラーミステリーとかいろんなジャンルに手を伸ばして書いて、webだけじゃなくて新人賞にも投げまくってたんですけど、全然勝てない。

これがだいたい3〜4年続いて、さすがに我が身を振り返りに来たんですよね。「あかんなあ」って。

でも、何があかんのか分からなかったんです。一次は時の運みたいなところもあるけど、二次以降は編集者さんが読んでるって知ってたので、編集さんが落とすってことは何かがダメなんだろう、と。

ただ、「何が」が分からなかった

創作本やYouTubeで勉強しても、抽象論を落とせなかった

片沼:そのときはどんな勉強をしていたんですか?

沖田:YouTubeで創作論や編集者がやってるチャンネルを結構見てましたね。あとは創作本も結構買って。

で、いろいろ勉強はしてたんですけど、振り返ると伸びなかった理由って、**「読んだ内容を自分の作品の具体的なところまで落とせなかった」**ことなんですよね。

「三幕構成はこうだよ」「ミッドポイントがあるよ」「主人公はこう書かなきゃ」とは書いてあるんですけど、創作本になると抽象的な書き方が多くて。

「主人公を活躍させなきゃいけないのは分かった。じゃあどうやって活躍させたらいいんだ?」

ってなって、自分の中で具体的に次どうしたらいいか分からない。「とりあえずこうかな、こうかな」で試してみる、みたいなのが続いて、それがだいぶ遠回りしました。

片沼:それは僕もアマチュア時代に苦労しました。ラノベに特化した創作本ってあんまりなかったり、あっても内容が薄いんですよね。一方でハリウッド系は充実してるんですけど、例が海外映画ばっかりなので「知らんがな」ってなったり。

沖田:ですね。私はハリウッド映画自体は好きで観てたから例は分かるんですけど、それを小説にどう書けばいいのかってなると違いがあって、落とし込めなかった。

今思い返すと、1個すごく大事な視点が抜けていたんですけど、それが分かったのは後の話で……。

ここまでの試行錯誤と泣かず飛ばずの時代が続いて、ようやく、片沼さんと出会うことになります


転機①:片沼との出会いとロシデレ分析記事

Xのアルゴリズムでの偶然の発見

片沼:最初に僕のことを知ったタイミングはどんな感じでした?

沖田:本当に偶然で、Xのアルゴリズムで出会ったって言い方になるんですけど(笑)

片沼:Xってそういうもんなんで(笑)

沖田:そのとき片沼さんは、今と違って質問者さんと一対一で動画通話で指導するみたいな形を始められてた時期だったんです。

片沼:ああ、ここは僕から補足しますね。

僕がこの「創作を教えています」と表で言い出したのは、デビュー2周年を機に2か月前くらいなんですけど、実はその前から別のペンネームでひっそりとこの活動をやってたんですよ。

そのときはいろんな形を試していて、ブログをやったり、ココナラというプラットフォームで「通話で教えます」みたいなサービスをやったり、形態を変えながらやっていた中で、沖田さんの目に止まったということですね。

ココナラの結果ポストが刺さった

沖田:そう、ちょうど見たのが、片沼さんがココナラの通話サービスの結果を割と長めのポストで書かれていたやつだったんです。

その通話相手の方も、新人賞に挑戦してるけど一次も通過できなくて、たまに通過しても二次で落とされるみたいな——本当に私と同じような境遇だったらしくて。

その方について片沼さんが、

「こういう人は、ライトノベルというものをクリティカルに勘違いしている部分がある。そこをちゃんとお話しさせていただいたので、今後修正していけばいい作品になるんじゃないかと思います」

みたいなことを書かれていたんです。それを見た瞬間、

「これ、まさに私のことじゃね?」

って我が身のことのように思ったんですよ。

「一次でめちゃくちゃ落ちてる、たまに突破しても二次は絶対突破できない。ということは私も絶対何かを勘違いしてる、クリティカルに何かをミスっている部分がある」って。

それで、片沼さんが当時やってたサービスとブログを全部見に行きました。

片沼:そこですぐに行動に移せるのがすごいです。

沖田:当時のnote記事も全部読んで——**「今まで自分が独学してきたことが、ライトノベルというフィルターを通したらこうなるのか」**って、かなり腑に落ちたんです。

「ロシデレ」分析記事で慟哭

沖田:その中で一番衝撃を受けたのが、片沼さんが書いてたロシデレ分析ですね。

片沼:あ、古いアカウントなのでちょっと恥ずかしいんですけど。

沖田:本当に、みなさんも読んでいただきたいんですが、ライトノベルですごく有名な現代ラブコメ『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』、通称「ロシデレ」を、片沼さんが丸々分析した記事です。

主人公とヒロインの関係性がこうなっていて、現代ラブコメではこういう作りが重要だから、それをこうやって落とし込んでいるからこの作品はすごく面白くなっている、と具体的に分析していて。

有料だったんですけど、無料部分を読んで即効で「ダメだ、これ買わなきゃ」って買って、ダーって読んで……放心しました。

片沼:放心。

沖田:本当に放心したんですよ。「あ、私これを間違ってたんだ」って。

一番大きく気づいたのが、主人公とヒロインの関係性の書き方だったんです。

「こうやって書かなきゃダメなんだ」って気合いが入って、その記事を読んだその日のうちにネタを考え始めて、「せっかくなら現代ラブコメ書こう」と決めて、必死になって書き上げました。

書き終わって、ふと見たら一番近くにあった賞が講談社ラノベ文庫新人賞だったんですよ。「あ、近い、よし出すか」ってえいって出して。これが21作目でした。

片沼:やっぱりこのフットワークの軽さも大事ですね。

21作目で初の二次突破、講談社編集付き

沖田:いつもと違う手応えはあったんです。「もしかしていけるかもしれない」って。

そしたらその作品が、人生初の二次選考突破でした。

片沼:おおー、4年つまずいていたところが。

沖田:しかも講談社ラノベ文庫新人賞は、二次を突破したら編集さんが付くって書いてあって。残念ながら三次落ちで最終には行けなかったんですけど、編集さんから連絡が来たんです。

一気に戸惑いましたよ。

「ロシデレの分析記事を読んで書いた作品が、いきなり今まで突破できなかった二次を安々と超えて、編集さんから連絡が来るって、どんなストーリー?」

って。4年つまずいてた二次の扉が、今まで何回叩いても開かなかったのに、「どうぞー」みたいな感じで、すっと開いた。

「あ、片沼さんの記事、本物だったんだ」って、そこで思いました。

片沼の補足:「自分が間違っているかもしれない」と思える力

片沼:いやー、めっちゃ嬉しい。あの記事、全部で2万文字くらい、20時間かけて書いたの覚えてるんですよ。

沖田:あ、やっぱりそれくらいかかってるんですね。納得です。

片沼:ただ、結果を出した沖田さん自身がすごい、というのも強調したくて。

これ、二次突破できたからすごいねという話じゃなくて、姿勢と思考がすごい人だなと。すぐ結果出す人ってこういう人だな、と。

「自分が間違っているかもしれない」と思える力

  1. 「自分も同じ状況だ、じゃあ自分も間違ってるかもしれない」と思った
  2. それを**「考え方変えないと」**まで行けた
  3. **「この人のブログ全部読んでみよう」**まで行動した
  4. 有料記事をポチッと購入できた

この4つを順に踏める人は本当に少ない。「自分が間違っているかもしれない」と思える当事者意識と、それを実行する力。

意外と、「自分はちゃんとできてるよな」って思う人の方が多いんですよ、僕はたくさんの人を見てきて。「事実ベースでは一緒だよね」と思ったとしても、「じゃあ考え方変えないと」まで行く人はさらに少ない。さらに「この人のブログ全部読んでみよう」までいける人はもっと少ない。

沖田:いやあ。私、4年ぐらいポコスカに落ちまくって自意識がぶち壊れてたんで、「ダメだ、自分はもうダメだ」って認識がすでにあったんですよ。「才能ない、才能ない、私才能ない」ってずっと思ってた。

片沼:その方が逆にいろんなものを吸収しやすいのかもしれないですね。

僕も教えていて思うんですけど、「結構結果を出してます」みたいな人の方が、人の意見を聞き入れづらいんですよ。

これは過去の僕もそうで、僕は沖田さんとは逆に、処女作で三次選考まで行ってしまったんですね。それで「あ、いけるじゃん」って思っちゃって、その後結果が出なくなって——「やっぱり人に教わらないと」となるまでに時間がかかってしまった。1年くらいですけど。今思うと、最初の三次は完全にビギナーズラックだったんですけども。


転機②:「ライトノベルの方程式」での学び

講座を作った理由

沖田:そして、二次突破で講談社の編集さんも付いて——というところで、次に大きく動いたのが、当時片沼さんが始めたメルマガですね。

片沼:ここは僕が補足しますね。

僕は当時、創作関連のいろんな締め切りが一段落して、ずっと温めていた構想を実行に移してたんですよ。何かというと、**「ライトノベル新人賞について、これ一本で全部学べる講座」**を作りたかったんです。

これは発信を始めたときからずっと思っていて、なかなか時間がなくてやれてなかったんですけど。

僕の発信の動機ってまさにここで、僕自身がアマチュア時代に苦労したのが、**「ライトノベルを学べる講座があんまりなかった」**ことだったんですよ。

本も多少はあるけど薄めだし、ハリウッド系の理論書はめちゃくちゃ充実しているんだけど、それをラノベに応用するときに壁がある。「絶対こういう講座があった方がいいじゃん」と思っていたので、「じゃあ自分が作るか」と。

3か月分のお小遣いを前借りして購入

片沼:そして、メルマガで講座の案内を出したときに、沖田さんは……。

沖田:速攻で「買います」って言って。私、今でもお小遣い制なんですけど、3か月分のお小遣いを前借りして買いました。

片沼:そうだったんですね(笑)

沖田:本当に、ロシデレ記事から始まって、ブログでも独学してきたものが繋がる感覚が一番強かったのが、このライトノベルの方程式だったんですよ。そしてこの動画講座が、20時間もあって。

片沼:最初は「これから撮りますんで、買ってくれた方には順次配信しますね」って始めたんですよ。10時間くらいかなと思ってたら、撮り終わったら20時間あって僕もびっくりしました。でも必要な20時間でした。

受験生スタイルで全メモ

沖田:私、最初の一発目の動画からものすごく学んできたものとつながる感覚があったので、「これは勉強するしかねえ」って意気込みありで受講しました。

マインドマップの資料を画面に出して話す形式だったんですけど、私そのフローチャートを全部スマホでクリックしながらメモしていたんですよ。

「片沼さんがこんなこと言ってる、よしこれもメモ」って動画を一時停止しながら書いて、また再生して、また一時停止して——その結果、1本30分くらいの動画を1時間以上かけて見てたんです。

片沼:受験生みたいですね。

沖田:本当に「こんなに勉強したの大学受験以来じゃない?」って思いながらやってました。私、3か月分のお小遣い使ってるんですから。前借りしたお小遣い、取り返さなきゃいけないんで何としても。

それで20時間以上の講座を終わって、メモも全部書き終わって満足してたら、最後に片沼さんが——

「ではせっかくここまで見ていただいた皆さんのために、今までの講座で出した資料を全部お送りします」

って言ったんですよ。「最初に欲しかった!」

片沼:いやあ、最初に出したらサボるかなと思って、最後まで見てくれた人にだけ出してるんですよ。でも、そのおかげで沖田さんはめっちゃメモして頭に入ったと思うんで。今の話を聞いてより一層、この形式にしておいてよかったなと思いました(笑)

MFで最終一歩手前、再現性を確信

沖田:講座が終わったのが1か月くらいで、ようやくそのタイミングで講談社の編集さんとのやり取りも始まったぐらいだったんですけど、それは置いといて、まずは「方程式で学んだことを使って一作書くしかねえ」と書き上げました。

最初に近かった賞のGAに出したら——なんと一次落ちで。

片沼:あれ?

沖田:「あれ? なんか全然違う、一次落ち?」って割とショックだったんですけど、まあわからん、別のにも出してみるかと思って、MF文庫Jライトノベル新人賞に出したんです。

何の改稿もせずに出したやつがどうなったかというと——最終選考まで行ってました

片沼:おお、最終!

沖田:MFは一次だけ発表して、その後は最終発表まで一気に飛ぶんです。最終発表の日に「さすがに連絡もなかったし、受賞してないよなあ」って見たら、上から2つ目くらい、三次選考通過者のところに私の作品があって。

「は?」って。

私、それまでMFは全く縁がなくて、一次通過が関の山。評価シートも5段階中の平均1〜2点ばっかりみたいなひどい状態だったんですよ。

片沼:MFの最終はすごいです。倍率も高いですし。

沖田:そこからは、その後にもう1作書いて、今度はリベンジでGAに出したら、今度はGAで二次通過、三次落ちで。

「あれ? 再現性がある」って自分で思ったんです。

片沼:二次通過が安定するのはすごいですね。沖田さんもご認識の通り、編集者を突破してるので。

沖田:本当にびっくりして。「え? 嘘やん」って。それまで二次の壁が破れなかったのが、最終一歩手前で安定するみたいな感じになってました。

片沼の補足:プロの視点が手に入った

沖田:方程式を受けて、本当に視野が広くなった感じがすごくあるんです。

「こういう点で考えるんだよ」「こういうところを見るんだよ」「こう考えたらこうなるよね」みたいなところとか。なんか、昔の自分だったら絶対考えてなかっただろうなっていう視点を、今は考えている自覚があります。

片沼:そうなんですよ。新たな視点って獲得するのが当然むずいんです、自分だけだと。

もちろん独学で作家になってる人はいるので不可能じゃないけど、最初から「こういう視点があるんだよ」ってもらった方が早いので。

僕がアマチュアの頃に「最初からプロの視点を教えてくれる教材があれよ」と思っていたものを、本当に実現して、本当に役立ててもらえたなって、今聞いて改めて思いましたね。


転機③:「ライトノベル梁山泊」読み合い会

講座だけでは足りないと気づいた

沖田:次に転機になったのが、ライトノベル梁山泊ですね。ここもほとりさんから説明お願いできますか?

片沼:了解です。

「ライトノベルの方程式」を作って、僕は結構満足してたんですよ。「よし、俺のやりたかったことができたぜ」と。動画を観て独学で学んで、全て身に付けて……実際、沖田さんがそんな感じの理想的なルートを通ってくれていたんですけど。

ただ、他の人なんかを教えていて感じたのが、**「方程式だけを見ても実行できる人は少ないかもしれない」**ということでした。

講座を見て「分かりました、自分の作品で書けました」って本人が思ってても、実はちょっとずれてる、みたいなことってあると思うんですよ。僕の言ったことをちょっとずれた解釈をしてるとか、明らかに弱点があるのに自分では気づけない——小説ってそういうものじゃないですか。

そこまでフォローする環境が必要だなと思ったんです。

実は僕自身もアマチュア時代に、こういうコミュニティに入って、そこにいたプロから作品を見てもらったり「プロってこういうこと考えてるんだ」っていうのを学んで、プロになったという経緯があるんですよ。それを講座だけで再現しようとしたのが方程式だったんですけど、やっぱりコミュニティ環境とプロからのフィードバックがあった方がいいだろう、と思い直して。

それで募集をかけたのが、「ライトノベル梁山泊」です。方程式が終わってから4か月後とかでしたかね。方程式を買ってくださった方に案内を出して、沖田さんはそのときの最初期メンバー。

沖田:そうですね、立ち上げメンバーで入りました。

片沼:最初は何も決まってなくて、「多分こういうイベントやりたいんですけど、どうですかね」みたいな感じで募集して。ありがたかったのが、沖田さんのおかげでイベントが出来たりもしたんですよね。

どんなイベントを作るか考える中で、「企画書を見ますよ」から始める予定だったんですけど、沖田さんに「その前にアイデアの段階で見るイベントは絶対あるべきでしょう」と言われて。「絶対そうじゃん」と思って、アイデア検討会というイベントが出来ました。

沖田:元ネタは飲酒公募勢のやり取りなんですよね。飲酒公募勢の仲間内でタイトルとかログラインを投げて「これ面白そう?」って話をやってたんですよ。あれめっちゃいいなと思ってて、梁山泊が始まったときに「絶対やりたいな」って思ってたんです。

編集者から微妙な反応だった「受賞作の前身」

沖田:そんな感じで、梁山泊で作品のアイデアやプロットを確認してもらえるイベントが始まって、いろいろフィードバックをもらえるようになったんですけど。

ちょうどそのタイミングで、講談社の編集さんとやり取りしていた3作品目、受賞作の前身になる作品を一回書き上げて、編集さんに送ったんですよ。

片沼:補足しておくと、新人賞である程度まで進んで担当がつくと、「相談した上で新人賞に出し直す」になりますね。その中で新しい作品を書いて相談していたと。

沖田:ですね。それで原稿を送ったら、すっごい微妙な返事が返ってきたんです。「うーん」みたいな感じで。

「プロットで書いてあった面白いのは確かに入ってるやん」とは言われつつも、ちょっと話して、「この辺どうですかね」みたいな話の中で、「これじゃあ何をどう直したらいいんだ」って自分でも分からなくなっちゃったんです。

編集さんからも「こう直してみたらどうですか」と話があったんですけど、なんか腑に落ちなくて。「何したらいいんだろう、何したらいいんだろう」となっていました。

「分からないなら誰かに聞くか」と思って、当時仲良くしていただいていた飲酒公募勢という集まりで読んでもらったり。そんなときにライトノベル梁山泊も始まったので、読み合い会っていうイベントに出してみたんです。

片沼の補足:なぜメンバー読み合いが機能するか

僕は梁山泊で、僕にアイデアを見せて僕がフィードバックする、僕と企画書を議論する、みたいなイベントとは別に、「メンバー同士で僕が関わらずに読み合う」イベントも用意しているんです。

素人同士の読み合いは危険、と一般には言われがちです。

  • お互い正しいか分からない
  • 仲間内でなれ合いになっちゃう

それも一定その通りだとは思います。

でも僕は梁山泊でこれをやる分には効果的だと思っています。なぜかと言うと、全員が方程式を学んでいるからです。

「ライトノベルとはこういうもので、新人賞を取るにはこういうものが必要だ」っていうのを共通の前提にした上で議論ができる。なので、「方程式に沿ったアドバイスをすると、ここ抜けてるんじゃない?」「方程式ではこう言ってたけど、この作品ではこれでいいんじゃない?」といった議論ができる。

これなら意義があるな、ということで読み合い会をやっています。

沖田さんは、それこそ毎回参加してくれてるんですよね。

沖田:読み合い会は月1なんですけど、私、今のところ皆勤賞です。

辛口指摘の一言で全部繋がる

沖田:第1回の読み合い会に、その悩んでる原稿を出してみたんです。確か当時は私を含めて参加者が3人で、2人からフィードバックをもらいました。

片方の方は結構面白かったって言ってくれたんですけど、もう片方が結構辛口で、点数めちゃくちゃ低かったんですよ。

「いやー、これどう?」みたいな感じで。その方がおっしゃってたのが、

「こういうタイトルだったら、こういう話を聞きたいって思ったんだけど、なんかちょっとあれだったよね」

って。通話だったんですけど、それを聞いた瞬間、私、ピーンと雷に撃たれたみたいな衝撃を受けて。

「あ、それだ!」

って。

片沼:おお。

沖田:飲酒公募勢の方からもらってたアドバイスと、編集さんのアドバイスと、今もらったアドバイスが全部1個に繋がった感じがあって、「あ、こうすればいいんだ」って。

私、その時無駄にテンション高かったんですけど、「あ、そう! そう!」って急にテンションが上がりだして、他の人の話を聞きながら一人でずっとスマホのメモ帳に「そうだ、こういう流れにする」って書き上げてました。

その日の読み合い会の議事が終わって「ありがとうございました」って言って、次の日の昼に編集さんに——

「すいません、こういう方針に書き直したんで、1から書き直していいですか

ってメッセージしました。

片沼:急だな〜。

1か月の締切に2週間で書き上げ

沖田:しかもあれなんですよ、講談社ラノベ文庫新人賞の締め切りが1か月後だったんです。

「あと1か月しかないのに、すいません全部書き直していいですか」って。編集さんから「どうしたんですか?」みたいな反応があって、「とりあえずどんな流れにするか話してください」と言われたので、その晩にまとめたやつを「こんな風にしようと思ってます」とバーッと送ったら、

「確かにこっちの方がだいぶスッキリしてますね。間に合いますか?」

って言われたので、

「間に合わせます」

と。

そこから順番に2週間で書き上げて、「できました!」って送って、編集さんと打ち合わせしたら、

「細かいところはこうした方がいいですけど、前よりめちゃくちゃ面白くなりました

と言ってもらえて、「よし、手応えがある!」って思って、修正を加えて応募しました。

そうしてこの前、受賞したのが本作ですね。

沖田:好感触だったので、せめて二次通過とか最終ぐらいまで行くかもしれないという淡い期待はあったんですけど、メールが飛んできたんです。

「受賞のお知らせ」

私、それを仕事帰りの自転車での信号待ち中に見たんですよ。信号が青になったんですけど、私、渡らなかったんですよ。

片沼:アニメみたいな演出。

沖田:「え?」ってなって、気づいたら点滅して、慌てて渡って。

受賞作には片沼の直接関与がゼロ

片沼:そして、ここまで全部話を聞いて、ようやく分かることとして、今回の受賞作に、僕自身は直接的には一切関与していないという(笑)

沖田:そうですね。この原稿もアイデアからも、片沼さんの目を一切通してないですよね。

片沼:「梁山泊からプロが」みたいに言ってたら、「アイデアからプロットから何から何まで全部片沼が見てたのか」と思った方もいるかもしれないですけど、全く知らないんですよ。

最初のログラインも「どんな物語ですか」も、僕も「へー、そんな話なんだ」と思いながら聞いてたくらいで。

沖田:受賞作前身は梁山泊が始まる前のアイデアだったんですよ。読み合い会で初めて見せた感じだったので。

片沼それもなしに、方程式と読み合い会だけで受賞っていうのが、すごい話。

沖田:本当に方程式のおかげで視点が獲得できて、最後に読み合い会の一押しがあって全部繋がりました。


沖田さんから振り返って——4年間遠回りの理由

沖田:今思い返してみると、4年間つまずいてた時期はそりゃ無理だよなって、今の自分から見ると思います。

片沼:どういう点で無理でした?

「売れるもの」という意識がなかった

沖田:一番大きいのは、

「出版はビジネスだ」「新人賞は売れるものを書かなきゃいけない」

ということを、4年前の私は本当に考えてなかったんですよね。

流行りや「こういうのが好かれてる」「だからこういうのが売れそう」みたいなことを、当時の私は——

「いや、そんなのどうでもいい。私はただ書きたい物語を書いて、それをぶつけてやるんだ」

みたいな、ちょっと痛い作家みたいな考え方してたんですよ。

今考えると、それでできる人は天才なんです。私は4年間それでできなかった、というのが「天才じゃない」という証明になっていたわけで。

天才は1〜2作で受賞して、新しいテンプレを作ったりすると思うんで。そういう人は祭り上げられがちなんですけど、私はそうじゃなかった。

ちゃんと「パッと聞いて面白そう」「何それわかる、ああそういう話か、と分かる」——そういう作品が出てこないとダメなんだなって、これが一番大きかったですね、得たものとしては。

片沼:それがプロの視点ということですよね。「先に言ってくれよ」みたいな感じだったかもしれませんが、これを最初から獲得して武器にできたのが、沖田さんがプロになるのが早かった理由だと思います。


「人に学ぶ=劣化コピー」ではない

片沼:関連して言うと、これも言いたいことなんですけど——

「人に学ぶと劣化コピーになる」みたいなことが世間で言われがちなんですよね。

でも、そうじゃないよと思うんですよ。

僕の話を吸収してもらって、もちろん「受賞する作品の構造はこうなってる」「ビジネス的にこういうことを考えなきゃいけない」みたいな視点を提供してるわけですけど、

じゃあ沖田さんが今回何で受賞したかというと、ぶっちぎりのコメディじゃないですか。

沖田:そこは隠しきれなかったです(笑)

片沼:僕も方程式の中で、「ラブコメを書きましょう」とかすごい制限をしてるわけじゃなくて、基礎的な部分があって、その上で個性を載せる余地があるような話をしてるつもりなんですよ。

その辺もちゃんとうまく使ってもらえたなと思います。

沖田:本当に「学んできたことはしながら」と思いつつ、「でもこれをやりたいよな」っていう自分のわがままは隠しきれなかった。

片沼:そこは両立するんですよ。

「売れ筋のジャンルを書くか、尖ったやつを書くか」みたいな二項対立で語られがちなんですけど、コンセプトは尖ってるけど構成は綺麗みたいな作品も普通にあるわけで。

もっと言うと、マーケティング的に売れそうな作品って、売れてる作品のコピーだけじゃないんですよ。「今こういうところが空いてるからこれをやるぜ」っていうのも、これもマーケティング。

そんなにややこしい話は講座では触れてないですけど、ちゃんとした視点を持った上で、その人なりにやりたいこと・このジャンルをやりたいというのは否定してない講座のつもりなので。その辺は梁山泊でもサポートしてますし、本当にいいロールモデルになってもらえたなって思います。


沖田さんの今後と梁山泊

受賞しても卒業せず、次作の準備中

沖田:受賞しましたけど、私、梁山泊やめるつもりないんで、これからもよろしくお願いします!

片沼:これから、公募とかも出し続ける予定ですか?

沖田:そうですね。先生の片沼さんが3作品で3つ受賞してデビューしてるんだから、教え子の私もそれくらいはしなきゃいけないんじゃない? って。

片沼:そんなことはないですけど(笑)。そうしたいんだったら全力で支援しますよ。

沖田:ぜひぜひ。次の新しいアイデアがなかなかいいのが出てこないので、ちょっとまたボロクソに言ってもらえれば

梁山泊の4ステップサイクル

片沼:梁山泊で何をやってるか、聞いてる方に紹介すると——作品作りの全段階でフィードバックをするのがイベント設計のコンセプトです。

梁山泊の4ステップサイクル

  1. アイデア検討会:アイデアをいっぱい出してもらって、僕が「いいんじゃないか/これは受賞できないでしょ」と評価
  2. 企画書会議:企画書を書いてきてもらって、僕と2時間くらい通話で相談
  3. 詳細プロット会議:プロット段階でフィードバック
  4. 読み合い会(メンバー同士)/全文フィードバック(僕):原稿段階で

沖田さんがここに入ってからの作品で言うと、1作このルートを全部通って電撃に出した。その作品、僕めちゃくちゃ楽しみなんですよ。タイトル=アイデアの時点でめちゃくちゃ良くて。

沖田:ありがとうございます。

片沼:これずっと言ってますけど、僕が受賞した3作のどれよりもいいんで。

沖田:まだまだです。今、梁山泊に投げてないやつ込みでアイデアフォルダに100個くらいあるんですけど、ちょっと厳選して出していきます。

片沼:3日前くらいに、梁山泊で沖田さんのお祝いをやったんですけど、他の方の感想として「沖田さんがずっとイベントに出てるのを見てきたから、自分も続けるように頑張ります」みたいな意見が多かったんですよ。これからもいいロールモデルとしてよろしくお願いします。


最後に:プロになってからの世界

「ゴールじゃなくスタート」が好きじゃない理由

片沼:これから沖田さんはプロとしての作業なんかが始まります。沖田さんはこれで受賞して本を出すという、いいスタートを切ったわけですけど、**「これがゴールじゃないよ、スタートだよ」**ってよく言われると思うんですね。

この言葉、僕はあんまり好きじゃないんですよ。なんか、今までの努力が無に帰す感じの響きがして。

そうじゃなくて、プロになってみるといろんなものがスタートするんですよ。

  • 初めてキャラデザが上がってくる
  • イラストが付く
  • 表紙ができる
  • 書籍の感想が届く
  • 本屋に本が並ぶ
  • もしかしたらコミカライズ化もある

アマチュアでは基本的に体験できないことが、どんどん広がっていく。

「今までの努力が無に帰す」というネガティブな意味じゃなくて、今まで体験できなかった幸せがどんどん広がっていくんだ、と。

今聞いてもピンとこないかもしれないですけど、1〜2年経つと「今までと全然違う世界だな」って思いますよ。だから、プロになりたいというのを創作のモチベにしてる方がいるなら、プロになるまではできる限り最短でいってほしいなって、老婆心ながら思います。

村上春樹「リングへようこそ」

沖田:私、好きな作家の村上春樹さんが『職業としての小説家』というエッセイで書かれてるんですけど——

新人賞は、これまで売れてるベストセラー作家や、それまでの先生方と無差別で殴り合うリングに上がる入場券なんで、皆さんぜひ見てください。リングへようこそ

って書いてあったんです。

私、今から培ってきたものを持って、皆さんと殴り合いをする形になるんだなと。雲の上にいるベストセラー作家さんと同じ本屋で並んで殴り合うっていう、すごいことをやるんだなってちょっと受け入れたんです。

片沼:また苦しいときも楽しいときもたくさんあるので、楽しんでいきましょう。殴り合いましょう。

沖田さんからのメッセージ

片沼:最後、振り返って一言いただけますか。

沖田:私も4年近く遠回りしたタイプの人間なんですけど、その後にこうやってご縁があって受賞させていただくことになりました。

絶対、皆さんも受賞を目指して頑張っていらっしゃる方が多いと思うんですよ。

「自分はずっとこのやり方でやってきたし」「これでやっぱり面白いって言ってくれた人がいたし」っていうのもあると思うんですが、それは大事なことだと私はすごく思うんですよ。

大事なことだと思うので、それを捨てずに、新しく勉強してほしいなってずっと思うんですよね。

「片沼さんの講座を受けて、今までの私を全部捨ててやり直すんだ」みたいなことは、絶対しなくていいと思ってるんです、本当に。

今までの自分があった上で、片沼さんの話とかそういうのを得た上で、それを自分でどうしていきたいのかまで考えられると、また変わってくる。

私はそんな感じで変わっていったので、勉強したり誰かに習うときに「今までの自分を全部捨てなきゃいけない、ということではない」というのは、すごく言いたいなと思いました。

片沼:これね、結局滲み出るんですよ、何かしらが

僕も新人賞を3つ受賞しました。「攻略法っぽいやり方でやってます」って言うと、自分のやりたいことを何もやってないみたいに思われるかもしれないですけど、全然そんなことなくて。

一見バラバラに見える3作品に共通してる要素とか、僕はこういうことをやりたいんだよねっていうのが実はあって。これは僕の中だけで言語化できればいいので、読者さんが感じる必要はないんですけど。

結局、滲み出るのが作家性なんだろうなって思います。

そういうのを踏まえた上で、講座やコミュニティをやってるつもりです。「梁山泊から受賞する人は全員コメディしか書きません」「全員ラブコメです」とか、絶対そんなことにはならないです。


まとめ

……というわけで、1時間48分のスペースを一気にまとめました。

教え子初の受賞ということで、僕にとっても本当に嬉しい記念のスペースになりました。沖田さんに改めて感謝を!

この記事も2万字近くになっちゃってるんですが、それでもニュアンスがかなり抜けているので、気になったトピックがあれば実際の音声も聴いてみてください。

「沖田さんみたいな道のりを通りたい」「やる気はあるけど結果が出ない」という方は、ぜひ創作指導のページもご覧ください。